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合格祈願のスナック菓子(ウ)カール

この記事の所要時間: 239

今時の若者とは思えないほど真面目で頑固な兄がいた。
兄は一流大学を目指し、来る日も来る日も勉強に明け暮れていた。

 

小さい頃私はお兄ちゃんっ子で、毎日馬鹿なことして遊んでいた。
一緒にお風呂も入ったり、近くの川で魚を捕まえてこっそり二人で飼ったりもした。
夜は二段ベッドに寝て、面白かったアニメや漫画の話をした。
今の兄には昔の面影がなく、常に自分のことを考え常にトップに立とうとしていた。
誰からの力も借りず、自分だけを信じ勤勉に励んでいた。県でもレベルの低い高校に
通う私を見下すような目で見る兄。

私はそんな兄が嫌いだった。 


本命校受験の一週間前から兄は部屋から出なくなり、食事も取らず一心不乱に
勉強をしていた。さすがの兄もプレッシャーを恐れていたのだろう。
私はそんな兄にあるものを買ってきた。期間限定で発売された合格祈願のスナック菓子(ウ)カールだ。
神経が張り詰めている時、こういったユニークなもので少しでも兄の気持ちを和らげられれば、と思った。
カタブツの兄は嫌いだったが、心の奥ではまた昔の時のように仲良くしたかった。
兄は無言で受け取った。返されると思っていた私は嬉しかった。

そして試験は無事終わり、兄は見事本命大に合格した。
家族全員でお祝い、外食に出かけた帰りの車の中で私は兄に言った。
「私のあげたカールのおかげだね」
兄は面白くなさそうな顔で一言。
「食べないで捨てた」

ショックと言うよりは腹が立ってしょうがなかった。
同時にもうこの兄とは昔のような仲には戻れないと思った。
きっと大学でも馬鹿みたいに勉強漬けで、卒業後は一流会社に就職
エリート街道まっしぐらのつまらない人生をおくるのだろう。ああこの兄にはピッタリだ。
それから3ヵ月後。兄が交通事故に遭ったとの連絡が入った。
両親と病院に駆けつけた時、兄はもう息絶えていた。
ああ、なんてあっけない死を迎えたんだろう。
つまらない兄にはこんな人生がピッタリだったんだろう。
涙は出なかった。腹が立っていた。
あんな兄の為にどうして私が涙を流さなきゃならないんだ。
そんな残酷なことを平気で思える自分に嫌気がさした。

 

葬式を済ませた後、母と一緒に兄のアパートに向かった。
遺品整理をするためだ。気が進まなかったが母一人では大変なのでしょうがない。
真面目で几帳面な兄らしく、部屋は気味悪いほど綺麗に片付けられていた。
本当にゴミ一つなかった。
母が衣服を整理している間、私は兄の勉強机の中を片付けるよう言われた。
(もしかしたらお金でも少し入っていないかな、あったらネコババしてやろう)
一番上の引き出しには受験関係の書類が残されていた。本命の合格報告書
も入っていて、顔に出さない兄もやっぱり嬉しかったんだと思った。
報告書の封筒を開けて、私は一瞬息が止まった。
丁寧に折りたたまれた菓子の袋が入っていた。
私があげた、カールの袋だった。
涙が止まらなかった。

やっぱりお兄ちゃんは、ずっと私のお兄ちゃんなんだね。

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