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1本のたばこ

この記事の所要時間: 112

そのときの部長はすっごく冷たくて、いつもインテリ独特のオーラを張り巡らせてる人だった。

飲みに誘っても来ることは無いし、忘年会なんかでも一人で淡々と飲むようなタイプで、
良く怒られていたこともあって俺はすごく苦手だった。

 

ある日のこと、部長の解雇を伝える社内メールが全員に届いた。

あのむかつく部長が居なくなる!!心の中でガッツポーズしたのは俺だけじゃなかったはずだ。

 

それから1週間後、部長の最後の出勤日。

退社のセレモニーが終わるとみんなそそくさと帰って行ったが
部長と俺だけは居残って仕事を片付けていた。


送別会の開催も自ら断った部長を苦々しく思っていると、珍しく専務から呼び出された。

しぶしぶ専務室に行くと、課長と専務が待ち構えていた。

俺はそこで始めて課長から「部長解雇の真相」を聞いた。

原因は俺だった。俺のミスの責任を全て部長がかぶってくれたらしい。

話を聞いてたまらなくなった俺は急いで部署に戻ったが、部長の姿はすでに無かった。

ふと自分の机の上を見ると、封の開いた買い置きのタバコ。すでに一本無くなってる。

横に添えられたメモにはこう書いてあった。

 

「これぐらいはいただいても良いはずだ」

 

俺にとっては無くなったその一本が、思い出の一本です。

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