おじいちゃんが買ってくれた、けん玉
おじいちゃんが、けんだまを買ってきてくれた。普通の玉の2倍あるけん玉。京都に旅行に行った時のおみやげらしい。おじいちゃんが一生懸命選んで買ってくれた、けん玉。
私はそんなけん玉に文句をつけた。「こんなんいらんわ、返してきて。」おじいちゃんは悲しそうな顔をした。
私はおばあちゃんに言った。「おじいちゃんがあんな危ないもんおみやげに買ってきた。」って。おばあちゃんは私の話を聞いておじいちゃんに言った。「こんな危ないの買ってきて怪我でもしたらそうするんや」と。おじいちゃんは、その1言で買ってきたけん玉を、重い足取りでどこかへ持っていった。
悲しそうな背中だった。
おじいちゃんが倒れた。ある日おばあちゃんから電話があった。
私はその時はどうせ何ともないやろってそんな気持ちでたいして心配もしてなかった。週末お母さんとおばあちゃんと一緒におじいちゃんが入院する病院へいった。おじいちゃんに喋りかけたけどおじいちゃんは何にも言わなかった。眠ったまま。脳梗塞っていう病気らしい。
おばあちゃんが言った「おじいいちゃん、あんたらが来るんいつか!?って毎日おばあちゃんに聞いとったわまぁ酒ばっかり飲んどったしいつかこうなるんちゃうかって思っとたけど、、、まあ酒ばっかり飲むで自業自得や」私はおばあちゃんが言ったこの言葉に何か深い意味があるような気がした。
それから毎週、お母さんと一緒におじいちゃんの入院する病院に言った。
その間おじいちゃんの病状はよくなる所か次第に悪くなった。一度も目を覚まさなかったし。喋る事もなかった。そして、おじいちゃんは死んだ。私は始めて今まで心配もしていなかった自分に腹をたてた。思い返せば一番私を可愛がってくれたのはおじいちゃんだった。
わたしの書いた下手な絵をほめてくれたのも、お母さんに怒られた私をかばってくれたのも、ままごとをして遊んでくれたのも、ちょっとしかないお金遣いでおやつを買ってくれたのも全部おじいちゃんだった。私はそんなおじいちゃんに酷いことばかりしてきた。
おじいちゃんの葬式の時、もうおじいちゃんは帰ってこないし、会えないんだ。と思うと涙がでそうになった。
おばあちゃんと一緒におじいちゃんのタンスの整理をしていたら、見覚えのあるけん玉がでてきた。普通のけん玉の2倍ある大きさの玉のけん玉。
あの時おじいちゃんはどんな、気持ちでけん玉をこのタンスの中にしまったんだろうか。
あの時素直にありがとうって言っとけば、、、。
「ごめん」私はけん玉に向かって謝った。
おじいちゃんが買ってきてくれたけん玉に。
この記事が気に入ったら
いいね!してね♪
おじいさん
可哀想