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兄ちゃん、兄も父親代理も失格だな

この記事の所要時間: 159

「うるさい!あっち行ってろ!」
それが妹と話した最後の言葉になった。

 

俺の家は所謂母子家庭ってやつで、小さい頃から父親が居なかったから
5才離れた妹は、俺を慕っていつもくっついてきた。

母親は俺達を育てるために仕事で忙しくしていてあまり家に居なかったし、
俺も妹が居た事が救いだった。

妹が可愛くて仕方なかった。

俺が妹の父親代わりになろう、俺が妹をずっと守ってやる!

小さい頃からそんなふうに思っていた。

 


ある日、司法試験の近かった俺はいつもよりイラついていた事もあって、
つまらない事が原因で怒鳴ってしまった。

そんなふうに怒鳴った事など今まで一度もなかった。

相当ショックだったのだろう。

妹は泣きそうな顔をして、「邪魔してごめんね」と言って家を飛び出していった。

俺は追い掛けなかった。

どうせ飯の時間になれば帰ってくると思っていた。

でも夜になっても妹は帰って来なかった。

次に妹が帰って来た時には、冷たくなっていた。

 

事故に遭い、体中傷だらけだった。

傷付いた顔が見ていられなかったのか、母が妹に泣きながら化粧をしていた。

その様子を見ながら、この時初めて声を出して泣いた。

後日、母と二人で妹の部屋を片付けていたら、小さな箱が見付かった。

綺麗に包装されていて、その下には
「お兄ちゃんお誕生日おめでとう」
と書かれたメッセージカードがあった。

気が付けば俺の誕生日が数日後に迫っていた。

母に言われて箱を開けてみると、俺が前々から欲しがっていた

限定物のピックが入っていた。

メッセージカードを開くと
「いつもありがとう。頑張ってるお兄ちゃんが大好きです。
家族を大切にしてくれるお兄ちゃんが大好きです。」
と書かれていた。

 

自分でもこんなに涙腺が緩かったのかと思うが、堪えきれずに泣いてしまった。

 

お前への最後の言葉があんな言葉だなんて…
もっと優しくしてやればよかった。

兄ちゃん、兄も父親代理も失格だな。

やり直せるなら、あの日に戻ってやり直したい。

 

誰よりも幸せでいて欲しかった妹が…
居なくなった…

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