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私は手のかからない子供だった

この記事の所要時間: 134

私が生まれてすぐ両親は離婚し、母の実家で祖父母、母と暮らしていた。

母は私を育てるため、毎日毎日 遅くまで残業していて、朝しか顔を合わせない日もたくさんあった。

休日は母は疲れて遅くまで寝ていて、どこかへ連れて行ってもらった記憶もほとんどなかった。

父兄同伴の遠足や運動会も、友達みんながお母さんと嬉しそうに手をつないでいるのを見てやりきれない気持ちになった。

私は手のかからない子供だったと思う。
自分の感情を抑えて
「会社休んで参観日に来て。」
なんて無茶を言ったことなんかなかった。
一人遊びも上手だった。

すべてに遠慮して幼い頃から敬語を使う子供だった。

小学校3年くらいのことだった。
遠足に行った後、作文を書くように言われた。
「五感」をテーマに書けと言われたんだと思う。
先生は、視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚を説明してくれた。

私はその中で触覚というものをテーマに選んだ。
遠足で山道を歩き学校までの道、皆2列になって手をつないで歩くわけだが、私は列の一番後ろを歩いていた。
生徒の数が奇数だったため、私は一人で歩いていたのだがその時、先生が来て、私と手をつないで歩いてくれた。

いつも先生が手をつなぐのはもっと手のかかる子ばかりで私はいつも羨ましいと思っていたのだと思う。

なんだかすごくドキドキして嬉しくて、涙が前がよく見えないまま学校に着いた。

作文には遠足の帰り道の先生の手が暖かかった、と書いたと思う。
私の作文を読みながら先生が
「手くらい、いつでもつないであげるのに。」
と震える声で言って、私の手をもう一度つないでくれた。

友達たちは私の作文に何が書いてあったか気になるみたいで私に聞いてきたが、振り切ってトイレに走って行ってまた泣いてしまった。

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