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世代を越えた結婚

この記事の所要時間: 435

私の祖母は2014年9月末に癌で84年という生涯の幕を閉じました。
祖母が息を引き取る前、そっと私だけに教えてくれた話しです。

 

 

スエ(祖母)は65年前、同級生のアツ(男の子)と今で言う交際をしていた。

彼とは家も近所の幼馴染。終戦から4年が経ち、スエが住んでいた村も平和を取り戻しつつあった。

スエの実家もアツの実家も農家で、互いに手伝いの合間を見つけては、フナ釣りに出掛けたり、山へ出掛けたりとデートを楽しんでいた。

付き合いはじめて1年が過ぎ、結婚を意識しはじめた2人。
互いの両親に認めてもらうために、2人はスエの実家へと挨拶に出向いた。

「結婚させてください!」

身分も同じ。何も障害になるものはない。スエもアツも”親たちはすんなり認めてくれる”とそう思っていた。
しかし、予想とかけ離れた言葉が返ってきた。

「アツ君には悪いが、娘の結婚相手はもう決まっている。」

スエも初めて聞いた話しに驚きを隠せず、

「聞いてない!」と。

驚く2人にスエの父は

「娘は隣町のタカ君(後の私の祖父。祖母より2つ年上)とお見合いをすることが決まっている。だから、君との結婚は認められない。」

と、冷静に話しをした。

放心状態のスエは家を飛び出し、いつもの池へと向った。
アツは追いかけ、泣きじゃくるスエに2人で村を出ようと約束をする。

駆け落ち同然で一旦は村を出たものの、田舎の農家育ちで若い2人には自分たちの力だけではどうすることも出来ず、
結局、村に戻ってきてしまう。

戻ってからはカンカンに怒ったスエ父に
2人きりで会うことを許されず、スエは父の言う通りタカと見合いをし、結婚をきに隣町へ引っ越した。

それからというもの、アツは出稼ぎに出る為、近くにある大きな町へと出ていってしまう。アツは工場関係の仕事につき、転勤を何度も繰り返した為、2人は何年も会うことなく、それぞれ別の人生を過ごしていくこととなった。

 

スエはタカとの間に4人の子をもうけ、普通に充実した生活を送っていた。
やがて子どもたちも結婚し、スエにとっては3人目の孫となる私が誕生した。
5人、6人と増え孫も10人になる。

スエが61歳の時、癌を患っていたタカが家族に見守られるなか他界。63歳だった。
スエが80歳の時、アツナ(孫の私)が結婚。

アツナとカズ(アツナ旦那)は大学で知り合い付き合い始めた。親の実家が近いということもあり、2人の中は急速に近くなり、結婚まではとんとん拍子に話しが進んでいった。

アツナ親とカズ親は顔合わせをするまで会ったことがなかったが、何度かご飯の席をもうけたので、結婚式当日は数回目の対面ということもあり、話しが盛り上がっていた。
式で初めて会った両家の祖父母たちも和気あいあいと話しをしていて、楽しい時間が過ぎていった。

そしてスエが82歳の時、トラ(スエのひ孫)が誕生する。
その1年後、肺炎をこじらせ床に伏せてしまったスエ。
元気だったスエの体調は戻らず、1人では起き上がれない程になってしまう。

この世を去る数日前、スエはアツナに昔の写真を出してくるように頼んだ。
アツナは写真を持ってスエの側に行くと、昔、祖父以外の人(アツ)と大恋愛をしていた話しをしてくれた。
昔は今のように自由な結婚よりも親が決めた人と言う習慣が田舎にはまだ根強くあったこと、それでもそのときに青春を楽しんでいたことなど、心が熱くなる話しだった。
思い出話しを聞いて余韻に浸っていたアツナは静かにうなずき話しを聞いていたが、なぜかアツナの結婚式の話しになる。

 

スエ「あのね~、カズ君のおじいちゃんね~、おばあちゃん会ったの初めてじゃないんや。」

アツナ「ふーうん。カズのお父さんのお父さん?知り合いやったん?」

スエ「そう。おばあちゃん、アツナの結婚式で会うたときにびっくりしたんや。その時はよう話さなんだけど。」

アツナ「何で?」

スエ「アツナはカズ君のおじいちゃんの名前しらんか?」

アツナ「ん?知らんよ?気にしたことなかったし。でも、あ!でも引き出物送る住所に書いてあるかも!カズ君書いてくれたからアツナ見てないけど。ちょっとまってよ…えーっと…」

スエ「アツヒト」

アツナ「そうそう!アツヒトさん!が、どうしたん?アツヒトさんと何で知り合い?…え??まさか!」

スエ「そうそう。おばあちゃんが今話ししたアツ君や。まさか、こんな形で会うとは~と思ったわ。もう60年以上も前の話しやけど。見た目も変わらんかったわ。カズ君を初めて見た時にアツ君に似た子やなーと思たけどまさかなぁ~。世間は狭いわ。なかなか会えなんだのに。」と言った。

驚きと涙で言葉が出ないアツナ。

スエ「世代をこえてまた関われるとはね。やっぱり運命やったんやろか。式場で話したんや。久しぶりやねー。言うて。それだけや。」
それっきりでこの話しは終わり。

 

それから数週間後、祖母は息を引き取った。

私にだけ打ち明けてくれたおばあちゃん。あの平凡な普通のおばあちゃんにそんな人生があったなんて。

今もこの話しを知っているのは、スエとアツナ、アツヒトとカズの4人だけ。
それ以外の身内には秘密の話し。

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