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小さな手で一生懸命作られたおにぎり

この記事の所要時間: 157

もう20年以上前の事でオンボロアパートで一人暮らしをしていた時の事だ。

 

安月給で金は無かったが無いは無いなりに何とか喰ってはいけた

。隣の部屋には50代くらいのお父さんと小学2年生の女の子が暮らしていた。

お父さんとは会えば挨拶する程度だったが娘の陽子ちゃんは仕事から帰ってくると
いつも共同スペースの洗濯場で洗濯をしていたので、会う機会も多く良く話はした。

 

いつだったか、夕方「今日もお父さん遅いの?」「うん」などと会話をしてたら俺の腹が「グーー」

「あれ?お兄ちゃん、お腹空いてるの?」

「まあね」

「ちょっと待ってて」と言うと部屋に入り、まもなくして形の「いびつ」なおにぎりを持ってきてくれた。

味も何も無いおにぎりだったけど俺は「ありがと」と言って、たいらげた。

 

それから彼女と会わない日が続いた。

どうしたのかな?と思う程度で気にはしなかった。

ある日、仕事から帰ると救急車が止まっていた。何だ何だと覗いてみる「何かあったんですか?」駆けつけてた大家さんに聞く。

「無理心中だよ」
「まいったよ、よそで死んでくれれば良いのに」と吐き捨てるように言う。

 

やがて救急隊が担架を運んでくる。
顔までかけられた毛布がすでに死んでいるのを物語るあれ?担架に納まる身体が小さい。

子供?ま・さ・か・・・。後から判った事だが、お父さんは病気がちで仕事もできず。
ガスも水道も止められていたらしい最後の電気が止められる時、事情を聞きに市役所の職員が大家さんと訪問して事件が発覚したそうだ。

食べる物も無く米どころか食品は何も無かったそうだ「あれ?お兄ちゃん、お腹空いてるの?」その言葉が脳裏に浮かんでくる・・・

あの時すでに食べる物はもう無かったんじゃないのだろうか?
たまたまお腹を空かしてた俺を、可愛そうと思い、あの小さな手で一生懸命おにぎりを作ってくれたんじゃないだろうか?

自分の食べる分も無いのに・・・・。

 

自然に涙がこみ上げてきた。やるせなかった。

その後、間をおかず引越ししたが。今でもあのアパートの近くを通ると思いだす。

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