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身元不明遺体の方たちへ手向ける飛び切りの笑顔の似顔絵

この記事の所要時間: 225

どこかで地震があると、自分も被災した阪神大震災のことを思い出す。

そのせいか、こんな夢を見た。

大地震災害直後の混乱が過ぎ、食料の配給も何とか皆が受けられるようになった。

方々で上がった火の手も治まり、霊感的に目星をつけて、瓦礫を掘る事も無くなった。

もう、生きる為に我武者羅になる必要は無く、以前のようにとまでいかなくとも、まともな社会が戻りつつあった。

 

僕は避難所に腰を下ろして、ぼろぼろに皮の剥けた両手を見て、絵が描きたくなった。

ぼんやりと、木の枝で砂地の地面に絵を描いていると、後ろからボランティアで指揮を執っていた人に声を掛けられた。

「君、絵描けるんだったっけ?丁度良かった。悪いんだけどもう一仕事頼みたいんだ。」

僕は、そんなに上手くないとか何とか言ったものの、ボランティアの人の顔を見て、
『あぁ、人の役に立つ事だな』
そう直感して引き受けることにした。

「似顔絵を描いて欲しいんだ」

その人は、少しばつの悪そうに言う。

はぁ、と頷く僕。

「実は、身元不明の人たちで…」

そう言い掛けて見慣れたテントの前に案内された。

このテントは、良く知っている。

小学校の学校の運動会とかでPTAの人の席にある白屋根のテントで、それらをいくつも連結して、やはり白い防水シートで壁を張り巡らせたものだ。

 

災害直後の今は、僕たちが昨日まで掘り出した人を横たえてある。

中に入ると、何人かの人が胸の上に番号札を置きメモを取っている。

独特の異臭が鼻に付いた。

「知っての通り、殆ど身元不明でね。」

「似顔絵を描いて、ポスターにするのですか?」
と僕。

しかし、見渡すと多くの人が顔に著しい欠損がある、写真で呼びかけるには、流石に厳しいだろう。

それにしても丸焼けな人もいる。

その様子を察したのか
「ん、そうゆう訳ではないんだ。だから、物凄く似ている必要は特に無い。」

状況が良く飲み込めない僕。

「実は、皆をもう此処に置いておけなくなったんだ。だから集団葬儀することになった。」

正直、僕達は此処に人を運んだとき、「死体である」という認識が無かった。

かなり後ろ向きだけど、生きていた人。いや実は何もかも悪夢で、明日には「やぁ」とかいって挨拶が出来る人たち、そんな甘い認識でいた。

だから、葬儀なんて出すと…

「死んじゃうじゃないですか!」

思わず、そう漏らした。

ボランティアの人も、辛そうな顔をして言った。

 

「…だから、君には悪いんだけど、彼らの似顔絵を描いてもらいたい…飛び切りの笑顔の遺影にしてくれ」

 

 

目が覚めたら、僕は泣いていた。

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